ワラビスタンの外れ 髭オヤヂがつくる絶品クルド・トルコ料理
西川口駅西口のチャイナゾーンを抜けた住宅街の一角にその店「CEM RESTAURANT」はある。髭面のクルド難民のおっちゃんが鋭利な刃物でケバブをそいでおり、同じく髭面の男たちがショットグラスのような小さな茶杯でミントティーを啜りながら談笑している。
そう、ここはクルド難民が多い蕨市、通称ワラビスタンの辺縁地域なのだ。ところがこの店、今年10月ごろに何の前触れもなく、シャッターを下ろし、一向に営業を再開する気配がない。廃業したのかと思いきや・・・・不死身の復活を遂げた。日本語がほとんどできないオッサンいわく、「ツーウィークスアゴー、カムバック…」。トルコにでも行っていたのか、詳細は不明なるも、会話が成立しないのだから仕方がない。
ところで、ケバブを売る店など都内各地にそれこそゴマンと存在するが、オッサンは腕がよくて、クルド・トルコ料理一般を幅広くこなして供してくれる。ヨーグルトやトマトを多用する本場の味は、中国料理に飽きた胃腸にやさしい。値段も安くて申し訳ないほどだ。
オッサンは「ほお、キミはクルドを知っとるのかい。わしもクルド人じゃ。出してるのはクルド料理だったり、トルコ料理だったりさ。両者似ているし…」というような趣旨のことを英単語を並べて言っていた。共同経営者か友人か比較的日本語ができる店員がいることもあるが、普段は写真つきメニューを指差しで注文するといった具合になる。トルコ街(死語)を抜けていくと、ひっそり佇むクルド・トルコ料理店のお話でした。